◆未来社会の新たな構造を実験中

オランダのユトレヒト市において、2017年現在において、未来社会の新たなモデル構造について、実証実験が行われている。

ベーシック・インカムは、個人へ無条件で一定の給付金を給付する新たな経済構造を持った社会システムモデルだ。

経済追及に邁進してきた20世紀の締め付け社会を反省し、より緩やかな生活を送れるように生活基盤を国家が保障し、より自由で創造的な人間らしい活動を後押ししようという趣旨が盛り込まれている。

経済追及への締め付けを緩めた生活を送る中で、人々はより自由な時間を新たな技術習得へ当てたり、介護や育児、ボランティアなど従事する時間に当てる。豊かな社会を経済至上主義にせず、より柔軟に充実した時間を過ごせるように図っている。

オランダにて、対象者約300人に対して、試験的に行われている。金銭的豊かさを求めて、支給額以上のお金を稼ぐ活動を行ってもよい。

 

◆ベーシック・インカムの意義

ベーシック・インカムは、いま現在の人々の多くが抱く「働かざる者、食うべからず」の言葉から反する行動のように見える。しかし、働くことの意義について、見つめ直すと、違った答えが導き出されてくる。

働くとは、自己実現のもっとも根幹を成す行為の一つになるが、加速度的に働き方を推し進めていけば、働き過ぎとなり、問題となる。働きすぎず、むしろ、働く時間を少なくすることで、より人間らしい生き方を充実させることにつながる。

働くことは人がより便利により快適な社会を実現するために貢献することを意味する。しかし、AI(人工知能)の発達によって、今後10年間で劇的にAIが人の仕事を代行するようになる。人は人のために尽くす生き方から少しずつ解放され、自身の生活をより充実することに貴重な時間を当てることができるようになる。

一日8時間労働を基本とする生き方もまた、天から与えられた摂理だとすることはできない。一日4時間労働でも、社会はより快適な方向へと向かう時代が到来したならば、もっとも時代に適合した労働時間となる。

 

今までが当然とする生き方、やり方は、時代の進歩とともに変わっても不自然ではない。今後、15年の間にAI(人工知能)は、人間並の知性になると予測されている。

それは、人間のあらゆる労働が、AI(人工知能)に取って代わることを意味する。AI(人工知能)に人は労働の全てを奪われてしまう事態になる。

そうなった時、人は余暇を楽しむことを生きがいとすることで社会で生きていける存在となる。人が仕事をすることを見つけること事態が難しくなる未来社会が到来すると想定したならば、ベーシック・インカムの試みの意義について、より重要性があることが理解できる。

 

(文:加賀美 総善)